米国割安成長株スクリーニング運用ガイド
1. 目的
米国上場企業の中から、単なる低PER株ではなく、現在のバリュエーションが上昇しなくても、EPSまたはFCF per shareの健全な成長だけで、2~3年間に30~50%程度以上の株価上昇を期待できる企業を発見する。
重視するのは次の組み合わせである。
- 中長期の売上成長
- 1株当たり利益・FCFの成長
- 高い資本効率
- 良好な利益の質
- 過大でない負債
- 小さいSBC・希薄化
- 妥当な同業比較
- 景気循環を平準化しても残る割安度
v3.5の必須統制
v3.5では、schema v3の会計・証拠管理を維持しつつ、v3.1で発生した「未解決候補が残っているのに該当なしで完了する」問題を修正する。
- 全母集団では上場状態、株価、時価総額、流動性を監査する。
- Provider総件数とページ枯渇、または全時価総額帯の枯渇証拠を記録する。取得上下限が一致するだけでは母集団完全性としない。
- 市場全体の大半についてROIC、FCF、負債、Forward PERを取得することを完了条件にしない。
- ベンダープリフィルター、利用可能な予想値、またはセクター×時価総額×流動性で層化した限定候補プールを作る。
enrichment_attemptedとenrichment_resolvedを分離する。試行数や評価可能数の閾値だけでは未解決キューを完了扱いにしない。- 売上成長率、1株成長率、ROIC、優先PERは単独の機械的足切りではなくガイドラインとして扱う。
- PER21~30倍の高成長例外や、売上成長率が低めでもForward PERと1株成長が魅力的な近似候補を詳細調査へ進める。
- シクリカル度3~5は
mid_cycle_normalization_requiredを付けて詳細調査へ進める。金融・REIT・自動車販売など、一般企業指標が不適切な業種は専用指標が揃うまでブロックする。 - エンリッチメント順はGARP適合可能性、予想人数、不足項目、ベース効果で決め、流動性やティッカー順だけで決めない。
no_qualifying_candidatesは、プール枯渇、未解決0、キュー0、全行最終処分、評価可能行1件以上のときだけ許可する。unprocessed = selected - verifiedを不変条件とし、選定した全銘柄に検証済みレコードを作る。- Markdownには一次選定、予算繰越、要補完、取得不能、一次落ち、除外をすべて表示する。
- 市場指標の鮮度は取得日時ではなく、
data_as_ofまたは公表日時で検証する。
従来のschema v3統制も継続する。四半期と通期の分離、NTM/FY1倍率、予想人数、情報源型、EV/FCFの現金定義、医薬品LOE、自動車販売会社のFloorplan Debt、企業イベント事前確認、設備投資符号、TTM再構築、標準FCFとAdjusted FCFの分離、GAAP調整表、チェックポイント、--require-finalである。
v3.5追加統制
- 監査、チェックポイント、最終スナップショットに同一の実行時フィンガープリントを必須とし、v3.1/v3.2の古い成果物を拒否する。
- 監査済み限定プールは、その範囲を明示した正式ランキングを作れるが、市場全体の「該当なし」と表現しない。
- EPS・FCF予想は、売上高、利益率、金利・その他、税率、税引後調整、希薄化後株式数から独立再計算する。目標EPS×株数で逆算した分子は検証にならない。
- Adjusted予想は、ドライバーから算出したGAAP指標と税引後調整額をGAAP調整表へ別々に一致させる。
- TTMキャッシュフローを構成する各期間に情報源IDを要求する。
- 現金分類、ROIC、EBITDAに根拠がなければ、データ品質点を制限する。
biopharma、royalty_biopharma、drug_delivery_platform等もcommercial biopharmaへ正規化し、製品・ロイヤリティ集中、LOE、6倍・8倍ストレスを要求する。peak_profit_risk=trueなら、シクリカル度が1~2でも平準化を必須とする。- Broad Screenの決定論的ステータスを説明生成段階で上書きしない。
- ユーザー依頼の時価総額範囲と実際の取得範囲を分離し、内部予算を理由に依頼範囲を書き換えない。
- 流動性は20営業日以上の平均売買代金またはProvider平均出来高から計算し、単日出来高を使用しない。
- Forward PERは日付付きのNTMまたはFY1 EPSからのみ計算し、FY1欠損時にFY2・FY3を代用しない。
- Broad Screenで選定した集合をハッシュで確定し、全選定銘柄を完了させる。予算変更はBroad Screenの再実行で行う。
- Helperのexit code 2は同一実行内の継続指示であり、ユーザーへ「続けて」と求めない。
段階的スクリーニング
レイヤーA:全母集団の上場・流動性監査
取引所、普通株・アクティブ状態、株価、時価総額、売買代金を確認する。この層は対象範囲の監査であり、全社の財務精査を意味しない。
レイヤーB:限定された経済候補プール
Forward評価と1株当たり成長予想を取得できる透明な候補プールを作る。ベンダーのプリフィルターを優先し、利用できない場合はセクターと時価総額で層化した流動性の高い銘柄を予想値で補完する。
レイヤーC:一次情報による精査
選定した銘柄だけをSEC・IRで確認し、キャッシュフロー、会計基準、同業、景気循環、業種KPI、シナリオを完成させる。
2. 調査範囲
標準条件:
- NYSE、Nasdaq、NYSE American
- 普通株
- 時価総額5億~200億ドルを中心
- 株価5ドル以上
- 平均売買代金500万ドル以上
- 最終候補は最大10銘柄。条件を満たさなければ無理に10銘柄へ増やさない
原則除外:
- OTC、ペニー株、極端な低流動性銘柄
- 実質的な事業を持たないSPAC・シェル
- 売上がほとんどない開発段階バイオ
- 継続的な増資を前提とする企業
- M&A価格に株価が固定された合併裁定銘柄
- 未解決の重大な会計・内部統制・ガバナンス問題
- 事業実態よりミーム需給だけで評価される銘柄
除外した企業と理由を記録し、黙って候補から消さない。
3. 段階的スクリーニング
第0段階:全上場母集団の監査
依頼範囲の各銘柄について、上場状態、普通株判定、取引所、株価、時価総額、流動性、情報源、実際の取得上下限を保存する。この層は対象範囲と売買可能性の監査であり、全社の完全な財務データを意味しない。
第1段階:限定候補プールの作成と補完
再現可能なベンダー絞り込み、利用可能な一括予想値、またはセクター×時価総額×流動性の層化抽出を使う。限定プールだけにForward評価と1株当たり成長予想を補完する。Forward評価、1株成長、予想人数などのブロック項目が足りない行はneeds_enrichmentとし、点数を付けない。金融・REIT・自動車販売は専用指標が揃うまで同様にブロックする。高シクリカル企業の平準化不足は非ブロックとし、魅力的な候補はsector_review_requiredとして実スコア付きで詳細調査へ進める。
候補発見の目安:
- 売上成長率10%前後以上
- EPSまたはFCF per share成長率15%前後以上、20~30%を高評価
- Forward PER 20倍以下を中心とし、高成長・高品質なら30倍まで例外
- 標準FCF黒字または業種別適切指標
- ROIC 10%前後以上
- 業種調整後Net Debt / EBITDA 2.5倍以下
- 希薄化後株式数の年率増加3%以下
- 十分な売買代金
限定プールは、全行が解決済みで、プール枯渇を確認した場合だけ完了扱いにする。試行しただけでは解決済みにしない。選定0であっても、未解決行やキューが残る場合はinsufficient_dataであり、「該当なし」ではない。正式な「該当なし」には、評価可能な行が1件以上必要である。
第2段階:企業イベント事前確認
詳細調査前に、上場状態、M&A、上場停止・廃止、ティッカー変更、株式分割、スピンオフ、最新重要イベント日時を確認する。進行中・完了済みM&Aや非アクティブ銘柄は通常ランキングから除外し、選定済みであれば除外レコードとして完了保存する。
第3段階:一次情報による精査
選定した全銘柄をSEC・IRで確認し、eligible、review_required、screened_out、excludedのいずれかへ完了させる。
最終的に必ず答える問い:
- 成長は持続可能か。
- 総額ではなく1株当たりでも成長しているか。
- 利益は営業キャッシュフローに裏付けられているか。
- 割安理由は一時的か、構造的か。
- PERが上昇しなくても十分なリターンがあるか。
- PERが20%低下してもプラスのリターンが残るか。
- どの数値・事象で投資仮説を無効化するか。
4. 分析時点の固定
候補間で比較する前に、分析スナップショットを固定する。
記録項目:
- 分析日時とタイムゾーン
- 株価取得日時、通常終値・プレマーケット・時間外の区分
- 最新決算期と発表日時
- 最新の重要な企業イベント
- コンセンサス取得日時
- FY1、FY2、FY3の会計年度対応
- 通貨と株式分割調整の有無
決算発表後の情報と決算発表前の終値を混在させない。混在する場合は株価を更新するか、明確に「イベント前評価」と表示する。厳格モードでは除外する。
5. 情報源と分類
重要な数字を次の4種類へ分類する。
reported_fact:報告済み実績company_guidance:会社予想market_consensus:市場コンセンサスanalyst_estimate:分析上の独自予想
優先順位:
- SEC提出資料
- 企業の決算リリース、株主書簡、説明資料、Prepared Remarks、Investor Day
- 信頼できるデータベンダーの会社予想・コンセンサス
- ニュース・外部分析は補足
情報が矛盾する場合はSEC提出資料を優先し、差異を説明する。
コンセンサスには、取得日、対象年度、FY1/FY2/NTM、GAAP/Adjusted、アナリスト数、可能なら予想レンジを付ける。
6. 主要計算
標準FCF
設備投資は正のキャッシュ支出額へ正規化する。ベンダーが負号付きで返す値をそのまま入力しない。
標準FCF = 営業キャッシュフロー - 設備投資キャッシュ支出額TTMは、報告済みTTM、独立した4四半期の合計、または「直近通期+当期YTD-前年同期YTD」のいずれかで作る。3カ月・6カ月・9カ月の累計値を重複合計しない。会社独自Adjusted FCFは定義を付けて別表示し、標準FCFの代替にしない。
SBC控除後の経済的FCF
SBC調整後FCF = 標準FCF - Stock-Based CompensationこれはGAAPのキャッシュフロー指標ではなく、株主経済価値を見る補助指標である。標準FCFと併記する。
FCF per share
FCF per share = 標準FCF / 希薄化後加重平均株式数ネットデットと利用可能現金
利用可能現金 = 企業現金 + 株主に利用可能な有価証券
Net Debt = 有利子負債 - 利用可能現金顧客資金、加盟店・決済フロート、制限現金を企業現金へ含めない。特に決済会社では総現金とCorporate cashを分ける。
ROIC
原則としてNOPATを平均投下資本で割る。ベンダー値を使う場合は定義を確認する。銀行・保険・REIT等には業種別指標を使う。
7. 成長の評価
過去3~5年:
- 売上CAGR
- GAAP EPS CAGR
- 標準FCF per share CAGR
- 基本・希薄化後株式数の増減
- 粗利益率、営業利益率、FCFマージン
- ROIC推移
将来2~3年:
- 今期・来期の売上成長
- 今期・来期のEPS成長
- 2年後・3年後のEPSまたはFCF per share
- 将来の希薄化後株式数
市場拡大、シェア上昇、ストック収益、スイッチングコスト、ネットワーク効果、製品ミックス、海外展開、営業レバレッジは加点する。
顧客・製品集中、M&Aだけの成長、株式発行を伴う成長、特需、補助金依存、コモディティ価格だけの増益、数量減を伴う値上げ、利益を犠牲にした売上成長は減点する。
8. EPS・FCF予想の整合性
コンセンサスをそのまま転載せず、少なくとも以下へ分解する。
売上高
× 粗利益率
- 営業費用
= 営業利益
+/- 金利・その他
- 税金
= 純利益
÷ 希薄化後株式数
= EPSFCFは、利益、非現金費用、運転資本、設備投資に分解する。
利益率の急上昇、税率の異常低下、過大な自社株買い、希薄化無視など、説明のない前提を警告する。
9. GAAPとNon-GAAP
現在、2年後、3年後の評価指標は、gaap、company_adjusted、analyst_normalized、sector_definedのいずれか一つへ統一する。現在GAAP、将来Adjustedのような混在では、PER据え置きシナリオを計算しない。Adjustedまたは分析者正規化指標は、GAAP指標、調整項目、反復性、算術一致、情報源IDを示す。
GAAP営業利益、Adjusted営業利益、GAAP EPS、Adjusted EPS、GAAP純利益、Adjusted EBITDA、標準FCF、Adjusted FCFを混同しない。
毎期繰り返すSBC、リストラクチャリング、買収費用、無形資産償却等を「一時的」として除外している企業は、Adjusted利益を割り引いて評価する。
10. 利益の質
確認項目:
- 純利益と営業キャッシュフローの乖離
- 売掛金・DSO
- 在庫・在庫日数
- 未請求売上・契約資産
- ソフトウェア開発費やR&Dの資本化
- リストラクチャリング・買収費用の常態化
- のれん・無形資産・減損
- 税効果・資産売却益・年金会計
- 関連当事者取引
- 監査法人変更
- Internal Control Weakness、修正再表示、SEC調査
- KPI定義の頻繁な変更
運転資本の一時的改善でFCFが増えている場合、通常状態のFCFを別途評価する。
11. SBC・希薄化・自社株買い
必ず確認:
- SBC金額
- SBC / 売上高
- SBC / 営業キャッシュフロー
- 基本・希薄化後株式数の3年推移
- RSU、オプション、ワラント、転換社債、ATM、Shelf、公募
- 実際の買い戻し額・株数
自社株買いの発表額ではなく、SBC発行分を差し引いた純減少株式数を評価する。負債で高値買い戻しをしていないかも確認する。
12. バリュエーションとシナリオ
利用指標:
- NTM/FY1/FY2予想PER
- EV/EBITDA、EV/EBIT、EV/FCF
- FCF利回り、SBC調整後FCF利回り
- PEG
- 自社5年中央値
- 真に比較可能な同業中央値
PER据え置き
将来株価 = 将来EPS × 現在Forward PER
上昇率 = 将来株価 / 現在株価 - 1
年率リターン = (将来株価 / 現在株価)^(1/年数) - 1PER20%低下
ストレスPER = 現在PER × 0.8
ストレス将来株価 = 将来EPS × ストレスPER同業中央値
比較基準が同一の場合のみ補助的に計算する。ランキングはリレーティングを前提にしない。
13. 同業比較
3~5社を、事業構造、顧客、成長段階、収益モデル、利益率、資本集約度で選ぶ。選定理由を説明する。
比較する指標:
- 成長率
- 利益率
- ROICまたは業種別収益性
- レバレッジ
- FCF利回り
- SBC
- 希薄化
- Forward valuation
対象企業だけが安い理由を、一時的・構造的・合理的のいずれかに分類する。
14. シクリカル評価
1~5で評価する。
- 1:景気影響が小さい
- 2:やや影響
- 3:中程度
- 4:大きい
- 5:極めて大きい
シクリカル企業は5~10年の売上、利益率、EPS、FCF、受注、受注残、Book-to-Bill、在庫、稼働率、顧客設備投資、商品価格、景気後退時の利益減少を確認する。
ピーク利益ではなく、ミッドサイクルEPS・FCFで実質PER・EV/FCFを計算する。
15. 直近決算
記録:
- 決算期・発表日
- 売上高、前年比、前四半期比、Organic Growth
- 粗利益率、GAAP営業利益・利益率
- GAAP EPS、Adjusted EPS
- 営業キャッシュフロー、FCF、設備投資、SBC
- 希薄化後株式数
- 会社予想と修正方向
- セグメント、受注、受注残、業種別KPI
- 一時項目、運転資本、税率
成長状態を、加速、安定、やや減速、明確に減速、底打ち、ピークアウトに分類する。
16. カタリスト・リスク・無効化条件
6~24カ月のカタリストを、時期、実現確率、影響経路とともに記載する。
最大リスクを抽象語だけで書かない。無効化条件は数値・事象で示す。
例:
- 売上成長率が2四半期連続で8%未満
- 受注残が前年比減少
- 粗利益率が55%未満
- NRRが100%未満
- Net Debt / EBITDAが3倍超
- 年率希薄化率が5%超
- FCF赤字化
- 主要顧客喪失
- 通期ガイダンス撤回
17. Fail-Closed方針
次の場合はランキングしない。
- 株価・決算・予想の基準時点が不整合
- 業種に不適切な評価指標
- 重要数値の出典不足
- データ品質が最低基準未満
- Hard exclusionが未解決
- 将来1株指標の整合性を確認できない
- 必須の同業比較・サイクル平準化ができない
状態:
eligible:ランキング可能review_required:有望だが未解決事項ありscreened_out:上場・取引は有効だが経済条件で一次選考落ちexcluded:M&A完了、非アクティブ、上場廃止、ハード除外条件または無効入力
未処理銘柄がある実行はprovisionalとし、完了済み銘柄の計算を表示しても最終3銘柄は選定しない。
条件を満たす企業がなければ「現時点では該当なし」と結論づける。
v3.5 候補品質の改善
- コアGARP、高成長例外、割安ニアミス、ミッドサイクル精査銘柄を複数レーンで選び、単一スタイルへの偏りを抑える。
- 30%上昇余地だけでなく、SBC控除後FCF、EV/FCF、ROIC、負債、希薄化、予想下限ケース、LOE尾部リスクを正式ランク条件にする。
- 軽微な不足は
conditional、重大な不足はreview_requiredとし、質の弱い候補を無理にランキングしない。 - 売上、利益率、金利、税率、株式数など各予想ドライバーに独立した根拠を要求し、目標EPSからの逆算を禁止する。
- スピンオフや大型買収はハード除外ではなく、Pro Forma平準化を必要とする企業移行イベントとして扱う。
- 最終レポートは事前監査を通し、参照した全原票を含む自己完結ZIPとして提供する。
Providerプリフィルターの再現率保護
単一の「PER20倍以下・売上成長8%以上・低シクリカル」という条件だけで候補プールを作らない。コアGARP、高成長例外、割安ニアミス、シクリカル平準化の4レーンを別々に取得して統合する。限定プールは原則30銘柄以上、少なくとも3レーンを含め、選定前に全行を解決する。